“学び”のスタートラインに立ったばかりの幼児期の子ども達が、負担感なく学習がスタートできるためには、
幼児期の子ども達の物事の学び方を捉え、「算数の特色」についても、きちんと捉えてリードしていくことが重要です。
「算数」という言葉を聞いて、まずイメージできるのが、羅列された数字を使っての計算や図形問題かもしれません。一般的に、「算数の学習」というと、このような問題を解くことに意識がいってしまうかもしれません。
しかし、算数というものには、深いものがあります。
算数というもの自体、そもそも抽象的です。
「抽象」というのは、「事物や表象を、ある性質・共通性・本質に着目し,それを抽(ひ)き出して把握すること」。要するに、「私たち頭の中の実物なしのイメージ像」です。 つまり、具体的なものがなかなか掴めない、イメージの中で思考を繰り広げなければいけないようなものです。
このような抽象的な算数を、具体の世界・五感の世界で生きている幼児期の子ども達が学ぶとなると、抽象的な算数を具体化させる作業が必要になってきます。
言い換えれば、抽象的なものを、いかに実の体験をベースに生きている幼児期のお子さんに、実感を伴って捉えられるような学びを提供できるかどうかが重要です。
数には、1という量、2という量、3という量・・・10という量・・・100という量、といった具合に、数の裏には、必ず“量”がついています。
さらに、その数量を“数字としての記号”を使って表します。
つまり、“数量”と「1,2,3・・・」といった“数字としての記号”の2つが組み合わさっています。
“数量”と“数字としての記号”。数には、この2つのコンビネーションが必須です。
しかし、ついついこの点が軽視されてしまい、すぐに数字だけを見て計算する学習に入ってしまうのが一般的です。
「2+1」、「3+1」、「4+1」といったような問題であれば、答は3,4,5・・・といった具合に順序数をあてはめていけば答えが出ていきますので、人間の頭は教わらなくても、大まかな法則性を見つけ出すことができます。
そのため、“数量”をきちんと認識できない状態で、数の操作(計算)だけに取り組ませることもできます。
しかし、計算ができるだけで安心してしまっても、「たし算」であれば計算の仕組みとしても「あわせる(合併)」・「加える(添加)」・「増える(増加)」。「ひき算」の意味である「残りを求める(求残)」・「差を求める(求差)」のイメージは、きちんとできているでしょうか。
さらに、その計算にともなって、数量が変化することも、きちんとイメージできているでしょうか。
幼児期に計算式や、図形の問題ばかりが並べられている内容に取り組んだところで、数の仕組みなどが習得できているとは限りません。
幼児の子ども達にとって、一番大事なのは、それぞれの数の量をきちんと認識することです。
そして、数の仕組み(順序数、大小)を発見し、さらには計算の仕組みも、クリアーなイメージで学んでいくことです。
その意味で、幼児期から算数の学習をするにあたっては、「数字が読める・書ける」ことと合わせて、
「数を正確に数えられる」「数字と数量がきちんとイメージできる」という状況を作ることが必要です。
ありとあらゆるものを五感を通して吸収し、実の体験から物事の仕組みを学び取る幼児期の子どもたちには、数であれば数量、図形であれば仕組みや成立ちを発見できる学び方がベストです。
抽象的である「算数」を、いかに、五感を通して、実感を伴った形で学べるか。
算数の特徴と、幼児期の子ども達の学びの特徴を考慮して、算数の学習をリードしていきたいものですね。